■事業計画書の書き方について 補助金を申請して採択されるかどうかを決める最大のポイントは、事業計画書がしっかり書けているかどうかです。 せっかく書類をたくさん準備して申請まで漕ぎつけても、審査員が見て、『この事業計画は合理性や実現可能性がない』と判断すれば、補助金申請は採択されません。 極端な話、計画している事業が本来は合理的で実現可能性が高くても、それを事業計画書という書類で十分表現できていなければ、採択されないケースもあります。 審査員は書面だけで審査するので、書類で十分にアピールできるかどうかが全てになります。 そのくらい事業計画書は大事です。 本記事では、採択率を上げるための事業計画書の書き方を解説します。 具体的に解説するために、小規模事業者持続化補助金の申請フォーマットに沿って書き方を説明します。 他のフォーマットにも応用可能なのでご参考にしてください。 ■事業計画書全体のストーリーを考える 補助金に限らず、文章を読むときには、読み手は大きなストーリーを頭の中でイメージしながら読解します。 書き手は、読み手が読み取りやすいストーリーを用意する必要があります。 持続化補助金で言えば、下記のようなストーリーが望ましいです。 ・持続化補助金計画書全体のストーリー ①把握したニーズに対応し ②かつ自社の強みを活かした ③新規事業を実施し ④販路開拓、新規顧客の獲得をすることで ⑤経営課題を解決する このストーリーの中の③の新規事業が、補助金の対象になる事業です。 ①と②で新規事業の合理性と実現可能性を表し、④と⑤で新規事業の効果を表します。 『なぜこの事業が必要かつ現実味があり、この事業を行うとどんな効果があるのか』という読み手の疑問に答える形になっています。 ここからは、事業計画書の事業概要の書き方を説明します。 ■事業概要の書き方 1.企業概要 ここでは、企業の沿革や簡単な事業紹介を書きます。 ここは評価のポイントにはあまりなりませんので、さらっと書いても大丈夫です。 2.経営、財務状況 ここでは経営、財務の状況を、客観的な数字を用いて書きます。 商材、サービス別の売上等の状況を、最低3カ年度は書きたいところです。 項目としては、受注数量、平均単価、売上、経費(仕入、販管費)、営業利益、利益率を書けば十分です。できれば図表を使って見やすくするのが望ましいです。 3.主な顧客、販路 ここでは、主な顧客層の分析をします。 また、顧客に対してどのような訴求施策(広告や営業など)を行っているかを書きます。 書き方では、定性記述と定量記述を分けます。 定性とは、ざっくり言うと、要約した文章のことです。 定量とは、数字に基づいた文章のことです。 例えば、定性記述(要約)は 『多摩地域を中心に関東近県までの中小企業等の事業者を顧客とし、主に口コミと紹介による受注によって事業を継続してきました。』 などとします。 定量記述では、顧客の年齢、性別、そのほか特徴別の割合やリピート率、口コミと紹介別の顧客の割合などを書きます。 4.現状分析 2.で書いた経営の現状に対する評価と原因分析をします。 ここは個別の経営状況によって書きぶりが変わるので一般化は難しいところです。 最低限、売上や利益、利益率の推移を経営者としてどう見ているのか、なぜそのような推移をたどっているのか、良かった点も悪かった点も含めて書く必要があります。 5.顧客ニーズ ここでは、既存ニーズ(既に対応しているニーズ)と、潜在ニーズ(これから対応すべきニーズ)について書きます。 ニーズ把握の根拠として、既存顧客の声やアンケート、市場調査などを挙げます。 単にこういうニーズがあると思われる、というのはよろしくないです。 根拠が必要です。 6.市場の規模と動向 ここでは、主に商圏内の市場規模と、市場がどんな動き(現在までの動きと将来へ向けての動き)を見せているのかを書きます。 これも根拠が必要なので、統計調査や経営する上での顧客の声などをもとに書きます。 統計は、国が行う国勢調査や経済センサス、RESASという地域別の経済統計システムが非常に役立つほか、民間の調査なども参考にできます。 7.競合他社の動向 ここでは、商圏内の競合他社の動きを書きます。 まず、自社の商圏はどの範囲なのかを定め、その範囲ではどのくらい競合がいるのかを書きます。 そして、それら競合の動きを、経営経験や顧客の声などをもとに書きます。 ここも客観的な根拠がある方が望ましいですが、狭い商圏の中での動きを統計で把握するのは難しいことが多いので、経営経験などから書くのが通常です。 8.自社や自社サービスの強み ここでは、他社と比較して自社のどこが強みなのかを書きます。 顧客目線、特に新規顧客の目線に立って、なぜ他社ではなく自社を選ぶのかを書きます。 そして重要なのは、この強みが、補助対象事業の特徴になるように書くことです。 そうすると、読み手である審査員は、『この事業者は、自分の強みをきちんとわかってて、それを活かしてこんな事業をしようとしてるんだな』とスンナリと読んでくれます。 逆に、強みと補助対象事業がずれていると、『この事業者は、自分のことを客観視できるているのか?なぜ強みである分野で勝負しないのか?』と余計な疑問を抱かせてしまいます。 自社の強みはなるべく補助対象事業とリンクさせましょう。 9.経営方針・目標 ここでは、まず経営の目的を書きます。これは、事業をすることで、市場や社会に何を提供するのか、会社の存在意義について、大きな視点で書きます。 ここはあまり評価のポイントにはなりませんので、あっさりと書いてもよい部分です。 経営の目標は、目的の実現のために何が必要かを書きます。 目標はあまり小さくてもいけませんが、大きすぎても実現性を疑われるので、適正な範囲で書く必要があります。 例) 『赤字事業にテコ入れをして黒字にし、事業全体の売上を前年比15%アップ。利益率を5%改善する』など。 10.経営課題 上記の目標と、2.で書いた現状との落差を埋めるために設定するのが経営課題です。 目標を達成するために何が必要なのかということです。 たいていの場合、収益性の改善とか、人材強化とか、広報戦略の練り直しなどが挙げられます。 ここでも重要なのは、経営課題と補助対象事業をリンクさせることです。 『この経営課題を解決する手段として、この補助対象事業があるのだ』というストーリーを読み手に受け取ってもらう必要があるからです。 11.今後のプラン ここでは、経営課題を解決するための具体的施策について書きます。2つか3つほど書くのが望ましいです。 広報戦略の見直しならば、ホームページのSEO対策に力を入れるとか、SNSを新たに始めるとか、チラシの配布頻度を変えるなどと書きます。 テクニック的なことで言うと、後で書く補助対象事業を大まかに書いたものが、この今後のプランになります。 逆に言うと、今後のプランをより具体化したものが、補助対象事業になります。 ここまでが事業概要として書く部分です。 ここからは、補助対象事業で何を行うのかを書きます。 ■補助事業概要の書き方 1.目的、狙い 何のためにこの事業を行うのかを書きます。 上で書いた経営課題の解決をするために事業を行う、というのが望ましい書き方です。 2.事業詳細 事業の詳細を書きます。 ここでは、全体として下記のストーリーに沿って書きます。 『自社の強みである〇〇を活かし、新規施策〇〇を行うことで 、販路開拓、新規顧客の獲得をする』 3.実現可能性 事業が絵に描いた餅ではなく、実現性があることを書きます。 以下の点について、根拠を示しつつ書くのが望ましいです。 ①ニーズの存在 市場調査や経営経営から把握したニーズ(見込み客)があることを書きます。 ②事業遂行能力の有無 資金繰り、人員体制、設備面などで事業に対応できることを書きます。 ③顧客誘導施策の有無 新規顧客が、どこで事業の存在を知り、どうやって事業の顧客になるのかのストーリーを書きます。 簡単にいえば、広報と営業の戦略です。 4.補助対象事業効果 ここでは、補助対象事業を行った結果、どのような効果が見込まれるのかを書きます。 上記の経営課題の解決がされる、という書き方をする必要があります。 項目としては最低限、売上、営業利益、利益率などの効果を書きます。 ここまで書いて、一応事業計画書は完成します。 全体のボリュームは、だいたいA4で6〜8枚程度になることが多いです。 簡単には書けませんが、事業計画書を書くと、自社の事業の客観的な把握につながりますし、他の補助金や融資の際にも使いまわせるので、無駄になることはないです。 以上、事業計画書の書き方の解説でした。