相続のお話その2 『戸籍の収集』 前回に引き続き、相続のお話です。前回は遺言書の確認をするお話でした。 遺言書について確認ができたら、次は法定相続人を確定するために、戸籍の収集をします。 ■戸籍とは 戸籍とは、人の出生から死亡までの親族関係を登録公証するものとされています。 簡単に言うと、ある人がいつ誰を親として、どこで生まれて、いつ誰と結婚し、いつ誰を子供としてもうけ、いつどこで亡くなったか、ということを記録するものです。 戸籍を全て集めれば、ある人の出生から死亡(生きていれば現時点)までの足どりがつかめます。 ■戸籍謄本を本籍地で取得 戸籍には、謄本や抄本という区別があります。 相続で必要なのは、戸籍全ての情報が記載された謄本です。 被相続人の本籍地の役所で取得します。 ■戸籍収集の目的と範囲 戸籍収集をすることで、親族内の誰が相続人となるのかを確定できます。(法定相続人の確定) 相続では、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍を全て収集します。 これで、ほとんどの場合に法定相続人が誰なのかは判明します。 ■戸籍の種類 戸籍には3つ種類があります。 現在戸籍、除籍、改製原戸籍です。 普通に戸籍という場合は、現在戸籍を指します。『役所で戸籍をとってくる』という場合の戸籍は、普通は現在戸籍です。 Aさんの現在戸籍には、Aさんが戸籍登録されてから現時点までの出生、結婚、離婚、出産などの情報が記載されています。 除籍というのは、空っぽの戸籍のことです。 例えば、Aさんだけの戸籍があるとして、Aさんが死亡して戸籍から取り除かれると、Aさんの戸籍は空っぽになり、除籍として扱われます。 他にも、結婚や離婚など、戸籍から取り除かれる原因は色々あります。 除籍は空っぽですが、記録として長期間(150年)保存されます。 ■改製原戸籍 戸籍は、制度や仕組みが度々変更されます。現在につながる戸籍制度は明治時代に作られましたが、当時は『戸主』などの制度があり、現在とはかなり異なる戸籍制度でした。その制度や仕組みを変更することを『改製』といいます。 アナログの戸籍をデジタル化するのも改製です。 大きな改製は2回行われました。 戦後の改製と、平成の改製(デジタル化)です。 改製されると、戸籍の書き換えが行われます。現在の制度の前の戸籍を、改製原戸籍といいます。これも長期間(150年)保存されます。 ■なぜ改製原戸籍が必要なのか なぜ改製原戸籍が必要なのかといいえば、改製される時に、既に離婚していたり死別していたりする親族の情報などは消えてしまうからです。 例を挙げます。 Aさんは30歳の時にBさんと結婚し、すぐに子供が生まれたとします。35歳の時に二人は離婚し、子供はBさんが引き取りました。その後に戸籍の改製がされ、Aさんの戸籍には、Aさんだけが残りました。その後、Aさんは再婚し、子供が生まれました。 ここで、Aさんが亡くなった場合、法定相続人は、妻と子供になります。そしてBさんとの間の子供にも相続権はあります。 しかし、現在の戸籍だけを見ても、Bさんとの間の子供のことは出てきません。 そこで、改製原戸籍が必要になります。 ■兄弟姉妹の相続 いま説明した3つの種類の戸籍を全て収集すれば、被相続人の生まれてから亡くなるまでの配偶者と子供に関する情報は判明しますので、ほとんどの場合、これで法定相続人が誰なのか確定します。 例外としては、例えば兄弟姉妹での相続がある場合などは、被相続人の親の戸籍を全て収集しないと、法定相続人を確定することができません。 ご遺族も知らない兄弟姉妹がいる場合があるからです。 ■全ての戸籍を収集します 3つの種類の戸籍を説明しましたが、相続のためには、全ての戸籍を請求する必要があります。漏れ、抜けを防ぐためです。 実務では、まず死亡した時点での戸籍を取得します。 そこから転籍(結婚などで戸籍を変えること)などの記録を見て、戸籍の変遷をたどって、出生までの戸籍までさかのぼります。 通常は、何度か戸籍を変更している場合があるので、その時々の本籍地の役所に請求して戸籍を取得します。 かなり面倒な作業ですが、戸籍収集を終えて、法定相続人が誰なのか確定します。 ■代理人の必要な相続人 ちなみに、赤ちゃんも法定相続人になれますが、赤ちゃんには意思能力が不足しているので、代理人が必要です。通常は親が代理人になります。 また、認知症が進んだ方なども、意思能力不足とされる場合があります。その場合は、成年後見人を選任する必要があります。 遺言書を確認し、戸籍収集を終えて、ようやく相続人が誰なのか確定します。 これで、相続人たちの話し合いが可能になりました。 次回は、遺産の範囲の確定について解説します。