公共工事の入札参加を目指す建設業者にとって、避けて通れない手続きのひとつが「経営事項審査(経審)」です。
経審は、国や地方自治体などが実施する公共工事における受注業者を選定するための基準となるもので、いわば建設業者の「成績表」ともいえる制度です。
本記事では、経審の概要、対象者、審査項目、申請手続きの流れ、点数アップのポイントなど、経審に関する基礎知識をわかりやすく解説します。
経営事項審査(経審)とは?
経営事項審査とは、建設業者が公共工事を受注するために必要な審査制度です。正式には「経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書」の交付を受けることを指します。
この審査を受けることで、以下のような評価が行われます:
- 経営規模(売上高や技術者数など)
- 経営状況(財務面の健全性)
- 技術力(有資格者や工事実績)
- 社会性(法令遵守、雇用環境など)
これらの情報が総合的に点数化され、「総合評定値(P点)」として通知されます。この評定値をもとに、国・都道府県・市町村などの発注機関が、工事発注の選定基準を定めるのです。
経審を受けなければならない業者とは?
原則として、公共工事を直接請け負いたいと考える建設業者(元請業者)は、経審の受審が必須です。
具体的には、
- 国・自治体・公団などが発注する公共工事の入札に参加したい
- 指名競争入札に登録したい
- 工事成績評定点(P点)を上げて格付けを向上させたい
といった場合に、経審の結果が必要になります。
なお、下請専門の業者や、民間工事のみを請け負う業者は、経審を受けなくても建設業を営むことは可能です。
経審の審査項目と配点
経審では、以下の5つの要素が点数化されます(2023年時点)。
審査項目 | 内容 | 略号 | 配点の目安(満点) |
---|---|---|---|
経営規模(完成工事高) | 過去3年の完成工事高 | X1 | 2,350点 |
経営規模(技術職員数) | 専任技術者の数 | X2 | 1,000点 |
経営状況分析 | 財務諸表に基づく経営健全性 | Y | 1,500点 |
技術力 | 有資格者や工事実績 | Z | 2,250点 |
その他(社会性等) | 雇用保険・建退共加入・法令遵守など | W | 900点 |
これらを加算し、最終的に「総合評定値(P)」が算出されます。
経審の申請手続きの流れ
経審は、いきなり申請できるわけではなく、以下の手順を踏む必要があります。
① 決算変更届の提出(事業年度終了報告)
毎事業年度終了後4か月以内に、建設業許可の行政庁(都道府県等)に「決算変更届」を提出します。これを提出していないと経審の申請はできません。
② 経営状況分析申請(Y評価)
国が登録した経営状況分析機関(たとえばワイズ公共データシステムなど)に対して、財務諸表などを提出し、分析結果通知書を取得します。
③ 経営規模等評価申請(X・Z・W評価)
許可行政庁に対して、必要書類(工事経歴書、技術職員名簿、建退共証明書など)を添えて申請します。
④ 評定値(P点)の通知書を取得
すべての審査が完了すると、最終的に「総合評定値通知書」が発行されます。これが公共工事への入札参加時に必要となる評価証明書です。
点数アップのポイントとは?
経審では、点数(P点)の高低が工事の格付けや指名ランクに直結します。少しでも点数を上げるには、次のような対策が有効です。
- 資格者を増やす(技術力Zの向上)
⇒ 1級・2級施工管理技士などの国家資格者を増員 - 黒字決算を継続(経営状況Yの改善)
⇒ 財務体質を強化し、債務超過を回避 - 社会保険、建退共などへの加入(社会性Wの向上)
⇒ 雇用保険、健康保険、厚生年金への加入を徹底 - 工事経歴書の記載精度を高める
⇒ 工種分類・完成工事高・元請/下請の区分を正確に記載
有効期限と定期的な更新が必要
経審の有効期間は1年間であり、継続して公共工事に参加するためには毎年更新申請を行う必要があります。
また、決算変更届を毎年提出していないと、翌年以降の経審申請ができません。申請漏れのないよう、スケジュール管理が非常に重要です。
まとめ:公共工事を狙うなら経審は不可欠!
経営事項審査(経審)は、公共工事の入札参加のための「登竜門」です。点数が高ければ、格付けランクが上がり、大型工事の受注も可能となります。
しかし、申請には複雑な書類作成と厳密な要件管理が求められ、自己流での申請には限界があります。行政書士などの専門家に依頼することで、ミスのない申請と、将来を見据えた点数アップ戦略が可能になります。
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