建設業許可を取得するには、いくつかの重要な要件を満たす必要があります。その中でも最も問い合わせが多いのが「経営業務の管理責任者(以下、経管)」です。
本記事では、経管の役割・要件・証明方法・実務上の注意点を、行政書士の視点からわかりやすく解説します。


経営業務管理責任者とは

1-1. 法令上の位置づけ

建設業法第7条では、許可を受けようとする事業者に対し、「経営業務の管理責任者を常勤で置くこと」を義務づけています。
経管とは、建設業の経営に関して総合的に管理・統括する能力を持つ人物のことです。単なる名義上の役員ではなく、実際に経営判断を行ってきた実績が必要です。

1-2. なぜ経管が必要なのか

建設業は契約・人材・資金・安全管理など多岐にわたる業務を伴う産業です。
そのため、行政は「経営体制が適正に整っているか」を判断するために、経管という要件を設けています。
経管が不在、あるいは要件を欠く場合は、許可取消しや更新拒否の対象となることもあります。


経営業務管理責任者の要件

経管として認められるには、次のような経験・常勤性などの基準を満たさなければなりません。

2-1. 経験年数の要件(原則5年以上)

経営業務を管理した経験が、原則として5年以上必要です。
この経験は以下のいずれかで認められます。

  • 法人の役員(取締役、業務執行社員など)として建設業を経営した経験
  • 個人事業主として建設業を営んだ経験
  • 経管に準ずる立場で経営業務を管理した経験(補佐経験)

補足:異業種経験も認められる場合

同一業種でなくとも、異なる建設業種で6年以上の経験を有する場合は認められるケースもあります。


2-2. 権限委任による管理経験(執行役員など)

取締役ではなくても、会社の経営権限を委任され、実質的に経営業務を統括していた場合、経管として認められることがあります。
ただし、社内の「権限委任規程」や「取締役会議事録」などの証拠が求められるため、形式上の肩書きだけでは不十分です。


2-3. 経営業務補佐者の制度(補佐併置方式)

2020年(令和2年)の法改正により、「経営業務管理責任者を補佐する体制」を設けることが認められました。
これにより、中小企業や新設法人でも許可取得がしやすくなっています。

  • 経管本人は、最低限の経験を有する常勤役員
  • それを補佐する複数人の補助者が、財務管理・労務管理・業務運営などの経験を分担して証明

この方式では、チーム体制で経管要件を満たすことが可能になります。


2-4. 常勤性(勤務実態)の要件

経管は「常勤」でなければなりません。以下の条件がポイントです。

  • 本店や主たる営業所で日常的に勤務していること
  • 健康保険・厚生年金の加入状況で常勤性を証明できること
  • 他社の役員や兼業がないこと(兼任は原則不可)
  • 報酬の支払い実績(源泉徴収票や給与台帳)で勤務実態を示せること

遠隔地に住む、名義上の役員のみ、報酬が極端に低額などのケースは、常勤性を否定される要因となります。


証明に必要な書類と実務ポイント

許可申請では、経管の経歴や常勤性を裏付ける資料を提出する必要があります。

3-1. 経験を証明する書類

  • 登記事項証明書(役員就任期間の確認)
  • 法人税確定申告書・決算書(業種記載)
  • 工事契約書・注文書・請求書など(経営実績を示す)
  • 権限委任規程・取締役会議事録(執行権限を証明)

3-2. 常勤性を証明する書類

  • 社会保険・厚生年金の加入証明書
  • 源泉徴収票・給与明細・住民税特別徴収票
  • 勤務実態を示す出勤簿や社内規程など

証拠が不十分な場合は、申請却下・補正指示が出ることもあるため、事前に行政書士へ相談するのが安心です。


よくある質問と注意点

Q1. 経管と専任技術者の兼任はできる?

理論上は可能ですが、実務上は「常勤・専任の実態」が疑われやすく、慎重な対応が求められます。
兼任する場合は、勤務時間・業務範囲の明確化、給与体系の整合性など、証明力のある書類が必須です。


Q2. 他業種の経験でも大丈夫?

他業種でも「経営業務の管理責任者」としての経験が6年以上あれば認められることがあります。
ただし、都道府県によって運用差があるため、申請前の事前相談が重要です。


Q3. 経管を外部から雇うことはできる?

可能ですが、注意が必要です。
外部の経管経験者を役員や社員として迎える場合でも、以下を整える必要があります。

  • 役員登記・雇用契約・報酬実績
  • 権限委任規程の整備
  • 勤務実態を示す社内書類の用意

名義貸し的な契約は厳禁であり、発覚すれば許可取消しのリスクがあります。


Q4. 経管が退任・死亡したらどうなる?

経管がいなくなった場合、速やかに「変更届」や「新経管の補充」が必要です。
長期間不在のまま放置すると、許可の取消し処分となることもあります。
後継者候補をあらかじめ育成しておくことが望ましいでしょう。


行政書士が支援できること

経管要件は、単なる形式審査ではなく、実態証明の裏付けが重視されます。
行政書士は以下のようなサポートを行います。

  • 経管要件の事前チェック(経験・常勤性の確認)
  • 必要書類リストアップと収集サポート
  • 証拠資料の整理・立証補助
  • 都道府県担当課への事前照会・申請代理

地域の行政書士事務所に依頼することで、最新の運用実務や書類様式に沿った申請が可能になります。


まとめ — 経管要件の理解が許可取得の第一歩

経営業務管理責任者は、建設業許可の“土台”ともいえる重要な要件です。
経験・常勤性・補佐体制・証明書類をきちんと整えれば、確実に許可を取得できます。

行政書士は、経管要件の適否判断から申請書類の作成・提出までを一貫してサポートできます。
建設業許可の取得をご検討中の方は、ぜひ専門家にご相談ください。