建設業許可の申請や、毎年の「決算変更届(事業年度終了届)」を提出する際に必ず求められるのが「工事経歴書(様式第2号)」です。
しかし、いざ書こうとすると――
- どの工事を書けばいいの?
- 元請と下請ってどう区別するの?
- 税込み?税抜き?
- 「7割ルール」って何?
と、疑問が次々に出てくるのではないでしょうか。
このページでは、初めてでも迷わず作れるように、行政書士が「工事経歴書の基本」「書き方」「注意点」をわかりやすく説明します。
工事経歴書とは?なぜ必要なのか
「工事経歴書」は、1年間で行った工事の実績をまとめた一覧表のことです。
建設業法施行規則で定められた「様式第2号」に沿って作成します。この書類は、行政があなたの会社を審査する際に次のような目的で使われます。
- 実際にどんな工事をしている会社なのかを確認する
- 専任技術者の経験やスキルが正しいかを確認する
- 経営事項審査(いわゆる「経審」)の評価資料として活用する
つまり、工事経歴書は建設業者の「信頼の履歴書」です。
数字だけでなく、業種や現場内容もわかるように書くことが大切です。
2. いつ・どんなときに提出するの?
工事経歴書は、主に次の2つのタイミングで必要になります。
提出場面 | 内容 | 根拠 |
---|---|---|
新規・更新申請時 | 最近1年間に完成した工事を記載 | 建設業法施行規則様式第2号 |
決算変更届(毎年) | 前の事業年度に完成した工事と、期末時点の未完成工事を記載 | 建設業法第11条第2項(※提出期限は事業年度終了後4か月以内) |
例:12月決算の会社は、翌年4月30日までに提出。
出し忘れると、更新時に「直近の実績が確認できない」として受付が止まる場合があります。
3. 書類の基本構成と書き方のルール
工事経歴書は、許可を受けたい業種ごとに1枚ずつ作ります。
たとえば「土木一式工事」と「とび・土工工事」を持っている会社は、それぞれ1枚ずつ作成します。
記載欄の主なポイントは以下のとおりです。
欄の名前 | 書く内容 | ポイント |
---|---|---|
工事件名 | 実際の契約書に近い表現で書く(例:〇〇道路舗装修繕工事) | 個人住宅は「個人住宅外構工事」など匿名でOK |
工事場所 | 市区町村まで(例:東京都立川市) | 番地まで不要 |
発注者名 | 会社・官公庁は正式名称。個人は「個人」「住宅施主」など | 個人情報保護に注意 |
契約金額 | 請負金額を税抜きまたは税込みで統一 | 用紙上の「税抜/税込」どちらかに丸をつける |
工期 | 着工月~竣工月 | 西暦・和暦どちらでも可(統一する) |
元請・下請 | 元請なら「元請」、下請なら「下請」 | 下請の場合は直接の注文者名を書く |
JVの別 | 共同企業体の場合は「JV」と記載 | 自社分の金額を記載 |
配置技術者 | 主任技術者または監理技術者の氏名を記載 | 途中で変わった場合は全員記載 |
4. 「7割ルール」とは?(経審を受ける場合)
経営事項審査(経審)を受ける会社は、「工事をすべて書く必要はなく、全体の金額の7割を超えるまで書けばOK」というルールがあります。
これは国土交通省の公式記載要領に定められているもので、通称「7割ルール」と呼ばれます。
書き方の順序
- 元請工事を、金額が大きい順に書く(7割を超えるまで)
- 続けて、元請・下請を合わせて7割を超えるまで記載
- 最後に、未完成の工事(未成工事)を金額順に書く
さらに、次のような打ち切りルールもあります。
- 1,000億円を超える部分は記載不要
- 軽微な工事(税込500万円未満)は、10件を超えたら省略OK
経審を受けない場合は、単純に「主な完成工事」「主な未成工事」を金額順に並べるだけでOKです。
5. よくある間違いとチェックポイント
工事経歴書のミスは非常に多く、補正指示が入る典型的な書類でもあります。
特に次の5点は必ずチェックしましょう。
チェック項目 | 説明 |
---|---|
✅ 対象年度が正しいか | 「直前の事業年度」に完成した工事が対象 |
✅ 税抜/税込が統一されているか | 混在していると再提出 |
✅ 元請・下請・JV・技術者欄が空欄でないか | いずれも必須欄 |
✅ 個人名がそのまま載っていないか | 個人情報保護の観点から修正必要 |
✅ 経審ありなら7割ルールを守っているか | 超過・不足は補正対象 |
6. 行政書士がよく行うサポート
行政書士は、次のようなサポートを行います。
- 工事経歴書の対象期間・業種の確認
- 工事の分類(どの業種に入るか)の判定
- 契約書・請求書などからの金額・発注者名の整理
- 経審を受ける場合の7割ルール適用のシミュレーション
- 様式の最新バージョンへの対応
特に、元請・下請・JVが混在している場合や、工事進行基準で経理している場合は、専門家にチェックしてもらうと安心です。
7. まとめ ― 「正確さ」と「誠実さ」が評価される書類
工事経歴書は、単に数字を並べるだけの書類ではありません。
それは、あなたの会社の「施工実績」「信用力」「誠実さ」を示す証拠資料です。
国土交通省の要領に沿って正確に作ることで、許可の審査がスムーズに進み、更新・経審でも高評価につながります。
不安がある場合は、行政書士がサポートいたします。
書類づくりに迷ったときは、まず専門家へご相談ください。