■ なぜ市場性の分析が重要か?

補助金の審査では、「この新事業に**収益性があるか」「市場で受け入れられる余地があるか」」という視点が非常に重視されます。単なる思いつきや内部論理だけでは不十分で、第三者が納得する根拠ある数字と構造分析が求められます。

新事業進出補助金では特に、「市場の新規性」が要件とされており、既存顧客とは異なるターゲット層を想定していることを、説得力ある形で示さなければなりません。


■ 市場性を示すための5つの観点

  1. 市場規模(ボリューム)
     - 新たに参入する市場の国内・地域別・BtoB/BtoC別の規模を明示
     - 出典:総務省「経済センサス」、矢野経済研究所、Statista など
     - 例:「D2C冷凍食品市場は2022年時点で〇〇億円、年平均成長率7.3%」
  2. 成長性(トレンド)
     - 過去数年の成長率や、今後5年間の市場予測
     - 出典:富士経済、JETROレポート、グローバルデータベース等
     - 例:「再生可能エネルギー関連設備市場は、2030年までに2倍の拡大が見込まれている」
  3. ニーズ分析(ターゲット)
     - 顧客属性(年齢・性別・法人種別)、課題、購買動機
     - 自社が提供する製品・サービスとのマッチング度を明示
     - 例:「30代〜40代共働き世帯において、調理時短商品への支出が前年比20%増」
  4. 競合分析(5フォース or 4P分析)
     - 同業他社のシェア・戦略と、自社の差別化ポイントを図解
     - 価格帯・販路・顧客対応などの比較が効果的
     - 例:「既存企業は大手OEM中心、当社は地域ニッチ+小ロット対応に特化」
  5. 収益性モデル(KPIの定量化)
     - 新市場における売上高・原価・営業利益率の見通し
     - 価格×販売数量による試算、1人当たり粗利、LTV(顧客生涯価値)など
     - 例:「初年度は月間200件の販売、平均単価4,500円、粗利率30%で年間売上1,080万円を想定」

■ 審査員に伝わる「構造的」な書き方例

【OK例】

当社が参入を計画する冷凍惣菜EC市場は、矢野経済研究所の調査によれば、2022年時点で市場規模1,400億円、前年比成長率7.3%と拡大傾向にある。中でも共働き世帯を中心とした「調理時短・健康志向ニーズ」が増加しており、当社の無添加・真空冷凍技術による差別化は有効である。
また、競合他社の多くは工場量産品であり、小ロット対応・地域密着型のD2Cモデルを持つプレイヤーは限られている。初年度の販売目標は月間200食(1食単価4,500円)、年間売上1,080万円を見込む。広告単価あたりの獲得コストは試験販売実績を基に1件1,000円で想定している。」

【NG例】

冷凍食品は最近流行っており、需要があると感じている。テレビなどでもよく紹介されているため、今後の成長が見込まれると思う。」

→ 客観性・論理性・数値裏付けがなく、審査では大きく減点される


■ よく使われる市場調査ソース一覧

ソース名主な内容URL例
矢野経済研究所国内市場規模・予測https://www.yano.co.jp
富士経済製造・流通系の市場予測https://www.fuji-keizai.co.jp
Statista海外統計、業界比較https://www.statista.com
経済産業省白書日本の産業構造変化https://www.meti.go.jp
JETRO海外展開・輸出向け市場https://www.jetro.go.jp

■ まとめ

「市場性」は、新事業の採算可能性を論理的に説明するパートであり、審査上もっともスコアが動く項目の一つです。

  • ただの希望的観測ではなく、信頼できる統計資料や市場調査を用いて根拠を示す
  • 競合分析や顧客のニーズとの接点を「構造的」に説明する
  • 売上や利益などのKPIを、計算式つきで示す

これらを押さえた事業計画書は、審査官の評価を高め、採択確率を大きく向上させます。