補助金は、中小企業や個人事業主にとって、設備投資や新規事業への挑戦を支える強力な支援制度です。しかし「申請すれば誰でももらえる」ものではなく、厳格な審査を経て、採択・不採択が決まります。
では、実際にどのような点が審査で重視されているのでしょうか?
本稿では、数多くの補助金申請支援を手がけてきた行政書士の現場感覚から、補助金審査の実情と採択されるための要点を解説します。
1. 補助金審査は「点数評価」で決まる
補助金審査は多くの場合、審査委員(外部有識者含む)による**定量的な評価基準(点数方式)**に基づいて行われます。
例:ものづくり補助金では100点満点中、60点以上が採択基準とされます。
審査基準は制度ごとに異なりますが、一般的には以下のような観点から評価されます:
- 課題の明確性
- 事業の革新性・独自性
- 実現可能性(ヒト・モノ・カネ)
- 収益性・継続性
- 地域経済や雇用への波及効果
- 補助対象経費の妥当性
採択されるためには、すべての項目で平均点以上を取ることが必要で、どれか一つが優れていても、他が弱ければ不採択になることも多々あります。
2. 審査現場のリアル:「読みやすさ」「説得力」が鍵
行政書士として、実際の不採択案件を分析すると、共通する失敗点が見えてきます。それは、「読みにくい」「説得力に欠ける」ことです。
よくあるNG例:
- 長文で結論が見えない(審査員は1件10分〜15分程度で読む)
- 抽象的で曖昧な表現が多い(例:「業務効率が上がる予定です」など)
- 売上見込みが現実離れしている
- 導入する設備やシステムの機能が説明不足
- 自社の強みや差別化要因が不明瞭
逆に、採択された計画書は、短くても的確に「意図」「実施内容」「効果」を伝えているのが特徴です。たとえば:
- 【課題】:人材不足により受注機会を逃している
- 【解決策】:業務管理ソフト導入により日次報告を自動化、年間200時間の作業削減
- 【効果】:外注依存率を10%削減し、利益率向上へ
このように、論理展開が明快で、審査員が「納得」できる構成が不可欠です。
3. 審査で好まれるキーワードと社会的要請
補助金は「政策目的に資する事業」を優先的に支援する制度です。したがって、国・自治体が重視しているテーマに沿った計画は、審査でも加点されやすい傾向にあります。
最近の審査で好まれるキーワード:
- DX(デジタル化・業務効率化)
- カーボンニュートラル対応
- 人材不足への対応(自動化・省力化)
- 地域経済への波及(地元雇用・地域資源の活用)
- 防災・感染症対策
たとえば、建設業者が省人化を目的に新型重機を導入する事例や、小売業者がECサイト構築により販路を全国展開する事例など、政策トレンドと合致した計画は採択率が高い傾向があります。
4. 現場で見た「意外な不採択理由」
以下は、行政書士が実際に関与した補助金申請の中で、不採択の原因となった事例です。
- 【事例1】補助対象経費が対象外(中古設備、親族企業への発注など)
- 【事例2】売上予測が現実離れ(前年比300%の伸びなど)
- 【事例3】経費総額が過剰(1000万円の補助に対して500万円の売上効果しか示されていない)
- 【事例4】事業実施期間に無理がある(人材や設備の準備が間に合わない)
このようなケースでは、**いかに事業が魅力的でも、「補助金制度の要件に沿っていない」**という理由で容赦なく落とされます。行政書士はこうした実務リスクを事前に察知し、回避する役割を果たします。
5. 行政書士が行う“審査目線での添削”
行政書士が補助金申請支援を行う際は、単に書類を整えるだけでなく、審査員の目線に立って「どうすれば加点されるか」を意識した添削・構成指導を行います。
行政書士の具体的な支援内容:
- 審査項目に沿った章立てと見出しの設計
- 抽象表現の具体化(「効率化」→「作業時間月20時間削減」)
- 加点要素の発掘(地域連携・雇用拡大・販路拡大)
- グラフ・表の挿入による視覚的な説得力の強化
- 補助対象経費の適否チェック
行政書士の経験と実例に基づくアドバイスが、申請者のアイデアを「採択される計画書」に仕立て上げる鍵となります。
まとめ:審査の現実を知ることで、補助金は通る
補助金は、制度を知り、審査の観点を意識し、計画を論理的かつ現実的に仕上げることで、着実に採択の可能性を高めることができます。
補助金申請で重要なのは、単に「やりたいことを書く」のではなく、「支援に値する理由を構造的に伝える」ことです。そしてそのためには、制度理解とともに、審査のリアルを知る専門家の視点が欠かせません。
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