「ものづくり補助金に採択された!」
「新事業進出補助金で5,000万円の枠が取れた!」
補助金の採択通知は、経営者にとってこの上なく嬉しい瞬間です。しかし、その喜びも束の間、次に訪れる「ある現実」に直面し、慌ててしまうケースが後を絶ちません。
それは、「補助金は、原則として『後払い』である」という現実です。
こんにちは。東京都・多摩地域(府中市・立川市・国立市など)を拠点に、建設業許可や補助金申請サポートを行う、おくだいら行政書士事務所です。
例えば、5,000万円の補助金(補助率1/2)に採択された場合、1億円の設備投資が必要です。この時、先に1億円全額を自社で支払い、その後の実績報告を経て、ようやく5,000万円が振り込まれるのが基本ルールです。
「採択されたのに、先に支払う1億円の現金がない…」
この「魔の期間」を乗り越えるために不可欠なのが、「つなぎ融資」です。この記事では、採択後に慌てないために知っておくべき「つなぎ融資」の重要性と、金融機関との賢い連携方法について、行政書士の視点から徹底解説します。
1. なぜ?補助金支払いの流れ(採択から入金まで)
なぜ、つなぎ融資が必要になるのか。それは、補助金の「採択」から「入金」までに、これだけ多くのステップと時間がかかるからです。
一般的な補助金の流れ(ものづくり補助金や新事業進出補助金など)を見てみましょう。
- 公募・申請
事業計画書を作成し、電子申請を行います。 - 採択通知
審査を経て「補助金交付候補者」として採択されます。
(重要!) この時点では、まだ「お金をもらう権利を得た」だけです。 - 交付申請・交付決定
採択された計画の経費精査などを行い、正式に「交付決定」を受けます。事業の開始(発注・契約)は、必ずこの交付決定日以降です。 - 事業実施・支払い
計画に基づき、機械装置の発注、工場の建設、システムの構築などを行います。
期間内に、取引先(ベンダー)への支払いを全額(例:1億円)完了させます。
【ここが資金不足の谷!】 - 実績報告・確定検査
事業が完了したら、「計画通りに実施し、支払いました」という証拠(契約書・請求書・振込控など)を揃えて事務局に実績報告を行います。
事務局による検査(書類・現地)を経て、補助金額が最終的に「確定」します。 - 補助金の請求・入金
確定した金額を事務局に請求し、ようやく指定口座に補助金(例:5,000万円)が振り込まれます。
ステップ4の「支払い」から、ステップ6の「入金」まで、短くても数ヶ月、事業規模が大きければ1年以上かかることも珍しくありません。この資金不足の谷を埋めるのが「つなぎ融資」の役割です。
2. 「つなぎ融資」とは何か?
つなぎ融資とは、その名の通り、「補助金が入金されるまでの間」を「つなぐ」ために金融機関から受ける短期の融資を指します。
- 目的: 補助事業の実行(設備代金や工事費の支払い)に充てること。
- 返済原資: 入金される予定の補助金そのもの。
金融機関にとって、補助金のつなぎ融資は「返済原資(補助金)が国や自治体から入金される」という裏付けがあるため、比較的審査が通りやすい融資の一つとされています。
しかし、「採択されたから100%融資が受けられる」と考えるのは早計です。
3. 金融機関は「つなぎ融資」をどう審査するか
金融機関(銀行、信用金庫、日本政策金融公庫など)は、つなぎ融資の相談を受けた際、主に以下の3点を確認します。
① 補助金の確実性
当然ですが、「本当に補助金が採択されているか」を確認します。「採択通知書」や「交付決定通知書」の提示を求められます。
② 事業者本人の財務状況
金融機関が最も気にする点の一つです。なぜなら、補助金はあくまで「一部」だからです。
- 自己負担分の支払い能力: 1億円の投資で5,000万円が補助金でも、残りの5,000万円は自己資金か、つなぎ融資とは別の「設備投資ローン」で賄う必要があります。この自己負担分を払える体力があるかは、厳しく見られます。
- 返済の確実性: 財務状況が著しく悪い(債務超過、大幅な赤字続きなど)場合、「実績報告が通らず補助金が不採択(交付取消)になるリスク」や、「補助金を別の借入返済に充ててしまうリスク」を懸念され、融資が難しくなることがあります。
③ 事業計画の実現可能性
採択された「事業計画書」そのものも審査対象です。「絵に描いた餅」ではなく、本当に売上が立ち、企業の成長につながる計画か、金融機関独自の目線でも評価されます。
4. 採択後に慌てない!金融機関との連携方法と「相談のタイミング」
では、どうすればスムーズにつなぎ融資を受けられるのでしょうか。答えは「タイミング」にあります。
× 悪いタイミング
- 採択後: 「採択されました!来月1億円払うので、つなぎ融資をお願いします!」
- 交付決定後: 「交付決定が出ました。来週支払いなので融資してください!」
これでは金融機関も審査の時間が取れず、最悪の場合「間に合わない」と断られてしまいます。
〇 良いタイミング
- 補助金申請の「準備段階」
最も理想的なのは、補助金の申請書(事業計画書)を作成している段階で、すで取引金融機関に相談しておくことです。
「現在、ものづくり補助金(または新事業進出補助金)の申請を準備しています。計画書がこちらです。もし採択された場合、自己負担分の融資と、入金までの『つなぎ融資』をお願いしたいと考えています」
これを事前に伝えておくことで、金融機関は以下の準備ができます。
- 計画書を事前に読み込み、事業の将来性を評価できる。
- 自己負担分の融資(プロパー融資や制度融資)の審査を並行して進められる。
- 「つなぎ融資」の稟議を通すための社内準備ができる。
「新事業進出補助金」は事前連携が必須!
特に「新事業進出補助金」では、金融機関から資金提供(融資)を受ける計画の場合、申請時に「金融機関による確認書」を添付することが要件となっています。
これは「計画段階から金融機関としっかり連携してください」という事務局からのメッセージです。この要件があるため、新事業進出補助金に取り組む際は、必然的に「良いタイミング」で金融機関と連携することになります。
5. 行政書士に依頼するメリット
補助金申請は、ただ採択されることだけがゴールではありません。計画を実行し、補助金が振り込まれ、事業を成長させるまでが本当のゴールです。
私たち行政書士は、単に申請書を代筆するだけではありません。
- 「融資」も「採択」も見据えた計画書を作成します
補助金事務局の審査ポイントと、金融機関の審査ポイント(事業の収益性・安全性)の両方を満たす、精度の高い事業計画書の作成をサポートします。 - 資金調達の全体像をアドバイスします
「つなぎ融資」だけでなく、「自己負担分」をどう調達するか、金融機関への相談はどのタイミングで行うべきか、資金繰り全体を見据えたアドバイスを行います。 - 採択後の複雑な手続きもサポートします 採択後の交付申請、事業の変更承認申請、そして最も複雑な「実績報告」まで、補助金が実際に入金されるまで伴走支援します。(※実績報告サポートは別途契約となる場合があります)
建設業や製造業の事業計画は、投資額も大きく、許認可が絡むことも多いため、専門的な知見が不可欠です。
おくだいら行政書士事務所は、建設業許可と補助金申請を両輪でサポートできることを強みとしております。多摩地域(府中・立川・国立・八王子など)で設備投資や新規事業をご検討中の経営者様は、ぜひ一度、お気軽にご相談ください。