建設業許可の取得には、いくつかの法定要件があります。そのうちの一つが「財産的基礎を有すること」です。
これは、「事業を継続的に遂行できるだけの資金力を有しているか」という視点から審査される要件であり、企業の経営基盤の健全性を測る重要なポイントです。
この記事では、「財産的基礎とは何か?」「自己資本要件とは?」「直前決算での確認方法」について、建設業許可申請を検討する事業者の方に向けて、わかりやすく解説します。
財産的基礎とは?
「財産的基礎」とは、建設業を安定して継続できるだけの資金力や資産構成を有していることを意味します。
建設業は高額の取引が発生しやすく、材料費や人件費の先行支出も多いため、事業を途中で頓挫させないための一定の資産基盤が求められます。
そのため、建設業法第7条第4号では、許可を取得するための要件として「財産的基礎」が明記されており、具体的には「自己資本の額」または「預金残高」などを用いて審査されます。
自己資本要件とは?
法人の場合、以下のいずれかの条件を満たすことで、財産的基礎の要件を満たしていると判断されます。
【法人の場合】
- 自己資本額が500万円以上あること(貸借対照表で確認)
- 500万円以上の預金残高があることを証明できること
- 許可の申請直前に5年以上、建設業の許可を受けて継続して営業していること
このうち最も一般的な方法が、「自己資本が500万円以上あること」です。
自己資本とは、会社が保有する**純資産(資産−負債)**を指し、貸借対照表の「純資産の部」に記載される金額をもとに判断されます。
自己資本額の確認方法
自己資本は、直近の決算書(貸借対照表)で確認されます。貸借対照表の次の項目が審査対象です:
- 資本金
- 利益剰余金
- 繰越利益
- その他資本剰余金 等
これらの合計額が500万円以上であることが求められます。
なお、直近決算が赤字続きで債務超過(負債>資産)に陥っている場合には、この要件を満たさないため、他の方法での証明が必要になります。
預金残高による証明も可能
直近決算で自己資本額が500万円に満たない場合でも、500万円以上の預金残高を証明することで要件をクリアすることが可能です。
証明方法:
- 金融機関が発行した残高証明書(原本、発行日から1か月以内)
- 申請法人名義の口座であることが必要
- 複数の口座を合算することも可能(同一名義に限る)
残高証明書を取得する際は、必ず事前に「建設業許可申請に使用する」旨を伝え、発行日や形式に注意を払いましょう。
個人事業主の場合の要件
個人事業主が建設業許可を申請する場合も、500万円以上の資金的基礎を証明する必要があります。
方法は法人とほぼ同様で、
- 確定申告書の貸借対照表で「純資産」が500万円以上
- 預金残高で500万円以上を証明
いずれかの方法で証明できればOKです。なお、個人名義の口座を使用する場合でも、事業用資金として使用していることがわかるとスムーズです。
直前5年間の営業実績による特例
すでに建設業許可を受けており、過去5年以上継続して営業している事業者については、自己資本額や預金残高が500万円未満であっても、継続性が評価されて許可が下りることがあります。
ただし、過去の決算書や許可番号の履歴、営業継続の実態を示す書類が必要となるため、慎重な準備が必要です。
財産的基礎に関するよくあるご相談
Q1:自己資本が499万円だった場合、許可は取れませんか?
A:原則として自己資本500万円が求められますが、残高証明書での補完が可能です。例えば、口座に500万円以上の預金があることを示す証明を提出すれば要件を満たせます。
Q2:一時的に借りた500万円でも大丈夫ですか?
A:形式的には可能ですが、直後に返済したり、資金の出所が不明瞭な場合は不適切と判断される可能性があります。できる限り実質的な資金力がある状態での申請が望ましいです。
Q3:資本金が100万円の法人でも許可は取れますか?
A:はい、資本金額そのものではなく「自己資本額」が審査対象となるため、他の項目でカバーされていれば許可取得は可能です。
まとめ:財産的基礎の要件は慎重な準備が必要
建設業許可における「財産的基礎」は、企業の経営安定性と工事遂行能力を保証するための重要な指標です。申請前に自己資本額や預金残高を確認し、要件を満たせるかどうかを事前に診断することが、スムーズな許可取得の鍵となります。
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