建設業許可を取得するためには、いくつかの重要な要件を満たす必要があります。その中でも、「専任技術者」は、技術面における管理責任者として不可欠な存在です。

「誰を専任技術者にすればよいのか?」「資格が必要?」「実務経験でも足りるのか?」といった疑問を持つ事業者は少なくありません。

本記事では、専任技術者の定義、求められる資格や実務経験、認められる証明書類、不足時の対応策について、詳しく解説します。


専任技術者とは?

「専任技術者」とは、営業所ごとに配置が義務付けられている建設工事の技術責任者です。建設業許可を取得・維持する上で、営業所ごとに1名以上の専任技術者を常勤で配置する必要があります

技術力の確保、品質・安全の管理、発注者への説明対応など、専門性が求められるポジションです。


専任技術者の2つの条件

1. 対象業種ごとに要件を満たすこと

建設業には29業種(一般建設業28種+解体業)がありますが、専任技術者は業種ごとに個別に要件を満たす必要があります。

たとえば、「建築一式工事」と「電気工事」では、別々の資格や実務経験が求められます。

2. 営業所に常勤であること

「専任」とは、他社との兼任や、現場常駐などで営業所に不在の状態が継続することは認められません。勤務実態の確認書類(給与明細や出勤簿)が必要になることもあります。


専任技術者の資格・実務経験の要件

要件を満たすには、次のいずれかの条件をクリアしている必要があります。

【1】国家資格等による証明(資格要件)

以下のような資格を有している場合、学歴や実務経験の要件を問わず、専任技術者として認められます。

  • 一級建築士、二級建築士(建築一式工事)
  • 1級・2級施工管理技士(各工事種別に応じたもの)
  • 技術士(該当分野)
  • 電気工事士(電気工事業)
  • 管工事施工管理技士(管工事業)など

【2】学歴+実務経験

  • 大学(該当学科)卒業 + 実務経験3年以上
  • 高等専門学校卒業 + 実務経験3年以上
  • 高校(該当学科)卒業 + 実務経験5年以上

「該当学科」とは、土木、建築、機械、電気、環境、衛生など、工事内容と関連する学科が対象です。

【3】実務経験のみ(無資格・学歴不問)

  • 該当工事に関する実務経験10年以上

学歴や資格がなくても、10年以上の継続した実務経験があれば、専任技術者と認定される可能性があります。


実務経験の具体例と注意点

「実務経験」とは、単に現場で働いていたことではなく、次のような内容が含まれている必要があります。

  • 工事の施工管理、工程管理、安全管理
  • 工程ごとの作業指示や監督
  • 発注者や元請との調整業務

注意点:

  • 証明できる資料の整備が必要
    • 工事契約書、注文書、請求書、写真、日報など
  • ブランクがあると通算できない
    • 継続して従事していたことが求められます

専任性の確認方法

専任技術者は、「営業所に常勤している」必要があります。次のような方法で常勤性が確認されます。

  • 雇用保険加入証明
  • 社会保険加入証明
  • 給与台帳・出勤簿
  • 勤務時間を定めた雇用契約書

※外注やアルバイト、他社との兼任では原則不可です。


よくある誤解とNG例

× 「現場でずっと働いてきたので10年経っている」 → 曖昧な証明では不可

10年の経験を証明できる書類がない場合、実務経験として認められません。

× 「資格を持っているが、業種が違う」 → 対象業種の資格でないと不可

たとえば、電気工事の資格で管工事業の専任技術者にはなれません。

× 「技術者が他社と兼任している」 → 常勤要件違反

複数企業に名前を貸している状態は、重大な違反となり、許可取消のリスクもあります。


専任技術者がいない場合の対応策

1.外部から技術者を採用する

資格や実務経験を有する人材を正社員として雇用し、社会保険に加入させることで、専任技術者の要件を満たすことが可能です。

2.経営者や役員の資格・経験を確認する

代表者や役員の中に、過去の経験や資格を有する人物がいるかを確認しましょう。証明資料がそろえば、自社内で対応可能な場合もあります。

3.実務経験を積み、将来的に要件を満たす

将来的に10年の実務経験を満たす見込みがある場合には、軽微な工事(500万円未満)で事業を継続しながら、経験を積んでいくという選択肢もあります。


まとめ:専任技術者の要件は慎重な確認が必要

建設業許可の取得・更新には、「専任技術者」の要件を正確に把握し、該当する資格や実務経験を適切な資料で証明することが重要です。

特に、無資格や実務経験のみでの申請を検討する場合は、証明の整合性や資料の信頼性が問われるため、行政書士など専門家によるサポートを受けることをおすすめします。


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