「ものづくり補助金」や「事業再構築補助金」といった大型補助金。 これらは、単に「良い機械を買いたい」という要望書ではありません。国の予算(税金)を使って、企業がどう変革し、どう日本経済に貢献するかを約束する「投資契約書」です。
そのため、審査員は事業主の「熱意」ではなく、冷徹に「採点基準(審査項目)」を満たしているかだけを見ています。
採択率が高い計画書には、業種を問わず共通する「勝ちパターン」が存在します。 今回は、審査員の採点基準に基づいた「採択される計画書の鉄則」を解説します。
鉄則1:「形容詞」を捨てて「数字」で語る(市場分析・競合優位性)
不採択になる計画書で最も多いのが、「形容詞」でのアピールです。
- ×「当社の技術は素晴らしいものです」
- ×「市場のニーズは非常に高いです」
審査員はあなたの業界の専門家ではないため、このような主観的な表現は一切評価しません。採点基準においても、市場規模や競合他社との比較について「定量的根拠(数字)」があるかが厳しく問われます 。
採択される書き方
すべての主張に「数字(エビデンス)」をセットにします。
- 市場の成長性 「なんとなく需要がある」ではなく、公的機関や民間調査会社のデータを引用し、「対象市場は年平均成長率(CAGR)〇%で拡大しており、〇〇年には〇兆円規模になる」と示します 。
- 競合優位性 「他社より優れている」ではなく、競合A社・B社と自社を並べた「比較表」を作成し、「A社は機能〇〇が無いが、自社はある(○×表)」「処理速度が他社平均の〇倍である」とスペックや数値で証明します 。
鉄則2:「暗黙知」を「形式知」に変えるストーリー(革新性)
多くの補助金(特にものづくり補助金)で最重要視されるのが「革新性」です 。 しかし、中小企業がいきなり「世界初の技術」を発明する必要はありません。
審査で高く評価される「革新」の黄金パターンは、「属人化したアナログ業務(暗黙知)」を「デジタル技術で標準化(形式知)する」というストーリーです。
評価されるロジックの例
- Before(課題):熟練職人の「勘と経験」に頼っており、品質にバラつきがあり、若手が育たない。
- Action(導入):最新のデジタル機器やロボットを導入し、職人の技術を数値データ化・自動化する。
- After(効果):経験の浅い社員でもベテランと同等の品質を出せるようになり、生産性が〇〇%向上する。
このように、「人」に依存していた強みを「仕組み」に昇華させるプロセスこそが、国が中小企業に求めている「革新」なのです。
鉄則3:「稼ぐ力」と「分配」の好循環(費用対効果・賃上げ)
補助金は「もらって終わり」ではありません。 審査員は、「この投資によって会社がどれだけ儲かり(付加価値額の向上)、その利益をどう従業員に還元するか(賃上げ)」という「投資対効果」を厳密にチェックします 。
必須となる2つのコミットメント
- 付加価値額の向上 単に売上が上がるだけでなく、原価や経費を差し引いた「付加価値額」が年率3%以上(補助金により異なりますが目安として)伸びる計画になっているか。その根拠として、単なる安売り拡大ではなく、高単価なサービスへの転換等が描かれているかが重要です 。
- 賃上げの実施 利益を会社が溜め込むのではなく、従業員の給与アップに充てる計画(給与支給総額の年率1.5%〜数%アップ等)が必須要件、または強力な加点項目となります 。
「儲かったら上げます」ではなく、「生産性を上げて儲けるので、計画的に賃上げを実行します」と宣言できる企業だけが、採択を勝ち取れます。
まとめ:事業計画書は「作文」ではなく「設計図」
採択される事業計画書とは、夢を語る「作文」ではなく、経営数値とロジックが緻密に組み上げられた「設計図」です。
- 客観的な数字で市場と強みを証明し、
- DXによる変革ストーリーを描き、
- 収益と分配の計画を約束する。
この3点が揃って初めて、審査員は「A評価」をつけます。
「自社の事業で、ここまで論理的な計画を作れるだろうか…」 そう不安に思われる経営者様は、ぜひおくだいら行政書士事務所にご相談ください。
当事務所は、府中市、立川市、八王子市エリアを中心に、社長の頭の中にある構想を、審査員が納得する「採択レベルの設計図」へと変換するサポートを行っています。