2025年〜2026年にかけて、中小企業の皆様が活用できる主要な大型補助金として「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」が注目されています。
「事業再構築補助金がなくなった今、自社の新しい設備投資や新規事業計画はどちらを使えばいいのか?」
「名前は似ているが、いったい何が違うのか分からない」
こんにちは、おくだいら行政書士事務所です。当事務所は多摩地域(府中市・立川市・国立市など)を拠点に、建設業許可や補助金申請サポートを専門としております。
結論から申し上げますと、この2つの補助金は似て非なるものであり、目的と要件が全く異なります。申請を間違えれば、採択の可能性がゼロになるどころか、膨大な準備時間が無駄になってしまいます。
この記事では、両制度の公募要領を熟知した行政書士が、両者の違いを徹底的に比較・解説します。あなたの事業計画がどちらに最適か、ぜひ見極めてください。
結論ファースト:あなたの事業はどっち?早わかり診断
まずは、あなたの計画がどちらに向いているか、簡単な診断で確認してみましょう。
- Q1. 計画は、既存事業の技術やノウハウを活かした「革新的な新製品・新サービス開発」ですか?
YES → 「ものづくり補助金」 が適している可能性が高いです。 - Q2. 計画は、既存事業とは「全く異なる顧客・市場」に向けた「新しい事業」への進出ですか?
YES → 「新事業進出補助金」 が適している可能性が高いです。 - Q3. 投資のメインは「機械装置」や「システム構築」ですか?
YES → どちらの補助金も対象です。 - Q4. 計画に「工場の新築・改修」や「新店舗の開設」など「建物費」が必須ですか?
YES → 「新事業進出補助金」 が唯一の選択肢となります。
第1章:【最重要】目的とコンセプトの違い
両補助金の最大の違いは、その「目的」にあります。
ものづくり補助金:「生産性の向上」
ものづくり補助金の目的は、中小企業が生産性向上に資する「革新的な新製品・新サービス開発」または「海外需要開拓」を行うための設備投資等を支援することです。
- ポイント:
- あくまで既存事業の延長線上にある「革新(イノベーション)」を支援します。
- 例えば、建設業者が新しい工法を開発するための新型重機を導入する、製造業がAIを活用した検品システムを開発・導入する、といったケースです。
- 既存の顧客に向けた、より高付加価値な製品開発も対象になります。
新事業進出補助金:「新市場・高付加価値事業への進出」
新事業進出補助金の目的は、中小企業が既存事業とは異なる事業への前向きな挑戦、すなわち「新市場・高付加価値事業」へ進出することを後押しすることです。
- ポイント:
- 「既存事業とは異なる」ことが絶対条件です。
- 例えば、建設業者が培った木材加工技術を活かし、一般消費者(BtoC)向けの高級家具製造・販売事業(ECサイト+実店舗)を立ち上げる、といったケースです。
- この場合、顧客が「工務店」から「一般消費者」へと明確に変わっています。
第2章:最大のハードル「新事業進出の3要件」
「新事業進出補助金」を申請するには、まず大前提として以下の「新事業進出の3要件」をすべて満たす事業計画でなければなりません。 これは、ものづくり補助金にはない、非常に厳しい要件です。
- 製品等の新規性要件
事業を行う事業者にとって「新規性」を持つ製品・サービスであること。 過去に製造・提供した実績があるものは対象外です。 単なる既存品の増産や、製造方法の変更だけでは認められません。 - 市場の新規性要件
新規事業の市場が、既存事業の市場とは異なる「新たな顧客層」(異なるニーズ・属性)であること。 単に既存顧客が新製品を買うだけ(需要の代替) や、既存製品を別の場所で売るだけ(単なる商圏の変更) では認められません。 - 新事業売上高要件
事業計画の最終年度において、この新規事業の売上高が、会社全体の総売上高の10%以上(または総付加価値額の15%以上)を占める見込みであること。
【行政書士の視点】
この3要件、特に「市場の新規性要件」が最大の関門です。「ものづくり補助金」は既存の取引先(顧客)向けの新製品開発でも申請可能ですが、「新事業進出補助金」は顧客層そのものを変える大胆な挑戦でなければ申請すらできません。
第3章:補助上限額と補助率の比較
投資規模によっても、選ぶべき補助金は変わります。
| 比較項目 | ものづくり補助金 (第22次) | 新事業進出補助金 (第2回) |
|---|---|---|
| 補助上限額 (従業員数) | 1~5人: 750万円 6~20人: 1,000万円 21~50人: 1,500万円 51人以上: 2,500万円 | 20人以下: 750万円~2,500万円 21~50人: 750万円~4,000万円 51~100人: 750万円~5,500万円 101人以上: 750万円~7,000万円 |
| グローバル枠 | 3,000万円 | (設定なし) |
| 補助率 | 1/2 (小規模・再生事業者は 2/3) | 1/2 |
| 賃上げ特例 (適用時の補助上限額) | 1~5人: 最大100万円 引上げ 6~20人: 最大250万円 引上げ 21~50人: 最大1,000万円 引上げ 51人以上: 最大1,000万円 引上げ | 20人以下: 3,000万円 21~50人: 5,000万円 51~100人: 7,000万円 101人以上: 9,000万円 |
【行政書士の視点】
投資規模が数千万円レベルの大規模な事業(例:新工場設立)は、「新事業進出補助金」が適しています。一方、小規模事業者(従業員数5人以下など)が1,000万円程度の設備投資を行う場合は、補助率が2/3になる「ものづくり補助金」の方が有利です。
また、「新事業進出補助金」は最低補助金額が750万円 です。 補助率1/2で計算すると、最低でも1,500万円(税抜)の投資計画でなければ申請できません。
第4章:対象経費の違い(「建物費」が決定的なカギ!)
事業計画に何(の経費)が必要か、という点も決定的な違いとなります。
共通して対象となる主要経費
- 機械装置・システム構築費
両制度とも、これが投資の核となることが一般的です。ものづくり補助金では必須経費です。 - 技術導入費、専門家経費、知的財産権等関連経費、運搬費、クラウドサービス利用費など。
「新事業進出補助金」のみ対象となる経費
「ものづくり補助金」では原則対象外となる、以下の経費が対象に含まれます。
- 建物費(建設・改修・撤去)
新規事業を行うための工場の新築・改修、販売のための店舗改装、既存設備の撤去費用などが対象です。 - 広告宣伝・販売促進費
新規事業の製品・サービスを新たな市場(顧客)に認知させるための費用(Webサイト制作、パンフレット、展示会出展など)が対象です。
【行政書士の視点】
ここが非常に明確な分岐点です。
「新しい機械は欲しいが、置く場所は既存の工場内で十分」→ ものづくり補助金
「新しい事業のために、工場を増築(新築)したい」「一般客向けの店舗を新たに借りたい(改装したい)」→ 新事業進出補助金
このように、計画に「建物」が必須かどうかで判断してください。
第5章:達成すべき「数値目標」の比較
どちらの補助金も、3〜5年の事業計画期間で、賃上げと生産性向上を実現する高い目標設定が求められます。 未達の場合は補助金の返還義務が生じる可能性があるため、シビアな比較が必要です。
| 比較項目 | ものづくり補助金 (第22次) | 新事業進出補助金 (第2回) |
|---|---|---|
| ① 付加価値額 | 事業者全体の年平均成長率 +3.0% 以上 | 事業者全体の年平均成長率 +4.0% 以上 |
| ② 給与支給総額 | 年平均成長率 +2.0% 以上 (または 最低賃金上昇率以上) | 年平均成長率 +2.5% 以上 (または 最低賃金上昇率以上) |
| ③ 事業所内最低賃金 | 毎年、地域別最低賃金 +30円 以上の水準 | 毎年、地域別最低賃金 +30円 以上の水準 |
【行政書士の視点】
「新事業進出補助金」の方が、付加価値額(+4.0%)、給与支給総額(+2.5%)の両方で、「ものづくり補助金」(+3.0%、+2.0%)よりも高い目標設定が求められます。
どちらも賃上げは必須ですが、「新事業進出補助金」は、より高い成長と従業員への還元が求められる、ハードルの高い補助金であると言えます。
第6章:その他の重要要件の比較
他にも、申請の前提条件に細かな違いがあります。
- ワークライフバランス要件
- もの補助: 「次世代育成支援対策推進法」に基づく一般事業主行動計画の公表が、従業員数21名以上の場合に必要。
- 新事業: 全事業者(従業員数に関わらず)で必要。
- 金融機関要件
- もの補助: 特に規定はありません(ただし資金調達計画は重要)。
- 新事業: 金融機関から資金提供(融資など)を受ける計画の場合、その金融機関による事業計画の確認書が申請時に必須です。
- 公募締切
- もの補助 (第22次): 2026年1月30日(金) 17:00
- 新事業 (第2回): 2025年12月19日(金) 18:00
- ※注:上記の締切日は本記事作成時点のものです。必ず最新の公募要領をご確認ください。
まとめ:あなたの会社に最適な補助金を選びましょう
最後に、両者の特徴をもう一度まとめます。
「ものづくり補助金」がおすすめなケース
- 既存事業の延長線上で、生産性向上のための革新的な製品・サービス開発がしたい。
- 投資は主に「機械装置」や「システム」で、「建物」は不要。
- 補助率は高い方が良い(小規模事業者で2/3の補助率を活用したい)。
「新事業進出補助金」がおすすめなケース
- 全く新しい市場・顧客(例:BtoBからBtoCへ)に挑戦する、大規模な新規事業だ。
- 新工場の「建設」や新店舗の「改修」など、「建物費」が必須だ。
- 投資規模が大きく(1,500万円以上)、補助上限額(最大7,000万円)を活用したい。
- 全社で高い成長目標(付加価値額+4.0%)と賃上げ(+2.5%)を達成する計画がある。
どちらの補助金も、採択の鍵を握るのは「事業計画書」の精度です。特に「新事業進出補助金」は、要件の解釈が非常に複雑で、行政書士などの専門家のサポートなしで申請するのは困難を極めます。
「自分の計画はどちらに当てはまるか?」
「建設業だが、新事業進出の要件を満たせるか?」
「採択される事業計画書の書き方をサポートしてほしい」
おくだいら行政書士事務所は、建設業許可や補助金申請を専門とし、多摩地域(府中・立川・国立・八王子など)の事業者様の挑戦を強力にバックアップしています。初回のご相談は無料ですので、まずはお気軽にご連絡ください。あなたの挑戦を全力でサポートいたします。