こんにちは。東京都・多摩地域(府中市・立川市・国立市など)を拠点に、建設業許可や補助金申請サポートを行っております、おくだいら行政書士事務所です。

「ものづくり補助金」や「新事業進出補助金」など、大型の補助金申請を検討する際、経営者様の前に立ちはだかる最大の壁が「事業計画書」です。

「時間をかけて書いたのに、不採択になってしまった」 「何を書けば審査員に響くのか、ポイントが分からない」 「自社の想いを詰め込んだが、どうも読みにくい気がする」

補助金に採択される計画書と、不採択になる計画書。その決定的な違いは、「審査員がどこを採点しているか」を知っているかどうかに尽きます。

審査員は、公募要領の裏にある詳細な「採点基準」に基づき、冷徹に点数をつけていきます。熱意や想いだけでは「凡庸(凡)」評価しか得られません。採択を勝ち取るには、審査項目に対し、客観的な根拠をもって「良い(良)」または「優れている(優)」という評価を積み重ねる必要があります。

この記事では、補助金審査の採点ロジックを徹底的に分析し、採択を「確実にする」ために、事業計画書の各項目で何をどのように書くべきか、網羅的に解説します。ぜひ、この記事を読みながらご自身の計画書をブラッシュアップしてみてください。


大前提:補助金審査の「4つの採点項目」

まず、審査員がどの観点からあなたの計画書を採点するかを知りましょう。審査項目は、大きく以下の4つに分類されます。

  1. 経営力
    • 経営者のビジョン、事業戦略は明確か。自社の現状(強み・弱み)を正しく把握しているか。
  2. 事業性
    • 最も配点が高い項目です。市場や顧客のニーズを捉え、競合他社に対する「革新性」や「優位性」があるか。付加価値額や賃上げの目標は妥当で、実現可能性が高いか。
  3. 実現可能性
    • 計画を実行するための技術力、体制、資金(自己資金や融資)は本当に準備できているか。スケジュールは妥当か。
  4. 政策面
    • 地域経済(例:多摩地域)への貢献や、国の進めるDX・GX(グリーン化)などに合致しているか。

これから解説する計画書の「書き方」は、これら4つの項目で「優」評価を得るための具体的なテクニックです。


【実践】採択される事業計画書「8つの構成要素」の書き方

審査員は、あなたの計画書を8つのパート(記載項目)に分けて読み解き、上記の4項目に当てはめて採点していきます。各パートで何を書くべきか、その「書き方」と「審査の視点」を解説します。

① 事業実施の背景(ここで「経営力」が試される)

【書くべき内容】 なぜ今、この補助金事業を行う必要があるのか、その背景を説明します。

  • 外部環境: 市場の動向(例:建設業界の人手不足、DX化の遅れ)、顧客ニーズの変化、競合他社の動き。
  • 内部環境: 自社の現状の事業内容、保有技術、主要設備、人員体制、財務状況(ヒト・モノ・カネ・情報)。
  • SWOT分析: 上記を踏まえ、自社の「強み(S)」「弱み(W)」を客観的に分析します。
  • 解決すべき課題: 導き出された「弱み」こそが、今回解決すべき「課題」です。

【行政書士の採択ポイント】 ここで審査員は「経営力」を見ています。単にSWOT分析の表を貼るだけでは「凡」評価です。 「弱み(W)」とは、今回の補助金事業で「解決すべき課題」そのものです。 「強み(S)」とは、その課題を解決できる「自社ならではの根拠」(例:長年培った精密加工技術、〇〇地域での強固な顧客基盤)です。 「外部環境(機会・脅威)の変化に対応するため、自社の強みを活かし、弱み(課題)を克服する」という論理的な流れをここで構築することが、計画書全体の背骨となります。

② 会社全体の事業計画(ビジョンと事業の位置づけ)

【書くべき内容】 次に、会社全体としての中長期的なビジョンと経営戦略を述べます。

  • 経営理念・経営戦略: 会社が何を目指しているのか。
  • 中長期ビジョン: 3年後、5年後にどのような企業になっていたいか。(例:多摩地域No.1の〇〇工事業者になる)
  • 本事業の位置づけ: そのビジョンを実現する上で、今回申請する補助事業が「なぜ今、必要なのか」「どう貢献するのか」を明確に位置づけます。

【行政書士の採択ポイント】 これも「経営力」の採点項目です。審査員は、「今回の補助金事業が、会社全体の戦略と効果的に組み込まれているか」を見ています。「儲かりそうだから」という場当たり的な計画ではなく、「5年後のビジョン達成のために、この1年でこの設備投資による基盤構築が不可欠だ」という、中長期戦略の一部であることを力説してください。

③ 今回の事業の革新性・差別化(「事業性」の核)

【書くべき内容】 この事業の「ウリ」は何か、他社と何が違うのかを具体的に説明します。

  • 革新性: 新しい点、創意工夫した点。
  • 競合分析: 競合他社(最低3社)の製品・サービスや代替品を具体的に分析します。(価格、納期、品質、機能などを表で比較)
  • 競争優位性: 競合と比較し、「なぜ自社が勝てるのか」を、①で分析した「強み」と絡めて説明します。

【行政書士の採択ポイント】 ここが「事業性」の最重要採点項目の一つです。配点が最も高いため、絶対に手を抜けません。 「革新性」というと難しく聞こえますが、「世界初」である必要はありません。「自社にとって新しい取り組み」であり、かつ「競合他社が容易に模倣できない優位性」があれば十分です。「当社の〇〇技術(強み)を応用することで、競合B社よりも納期を30%短縮できる(優位性)」といった具体的なロジックを構築しましょう。

④ 市場への効果(売上・付加価値額の根拠)

【書くべき内容】 事業化(補助事業終了後)の数値計画とその「算出根拠」を具体的に示します。

  • 市場分析: 想定する市場規模、ターゲット顧客、顧客ニーズの調査結果(統計データ、アンケート結果など)。
  • 販売戦略: どのように販売・提供するのか(ビジネスモデル、販売体制、価格設定)。
  • 数値計画の根拠: 事業計画全体の数値(売上高、付加価値額)の具体的な算出根拠。

【行政書士の採択ポイント】 計画書の中で最も論理性が問われる部分です。審査員は「本当にこの計画通りに売れるのか?」「付加価値額の目標を実現できるか?」という目で見ています。「頑張れば売れる」ではなく、「なぜ売れるか」の根拠(エビデンス)を示しましょう。 「市場規模が〇〇億円で、そのうち△%のシェアを獲得する」といった曖昧な計画では「凡」評価です。 「すでに既存顧客A社から、この新製品について〇〇個の内示(引き合い)を得ている」といった具体的な証拠(見積書やメールなど)を添付できれば、実現可能性が飛躍的に高まり、「優」評価に近づきます。

⑤ 賃金引上げ計画(「事業性」のもう一つの核)

【書くべき内容】 ④で生み出した利益(付加価値額)を、どう従業員に還元するかの計画です。

  • 賃上げ計画: 給与支給総額、一人当たり給与支給総額、事業所内最低賃金、それぞれの具体的な引上げ計画とスケジュール。

【行政書士の採択ポイント】 「賃上げ」は、現在の大型補助金の必須要件であり、極めて重要な審査項目です。 「なんとなく上げる」ではダメです。④の付加価値額増加と連動させ、「④の計画達成により、付加価値額がX万円増加する。そのうちY%を人件費(賃上げ原資)に充当し、給与支給総額をZ%引き上げる」という、具体的かつ論理的な根拠を示してください。 「大幅な賃上げ特例」を狙う場合は、人件費だけでなく、人材育成(研修、資格取得支援)などにも踏み込むと、計画の妥当性が増します。

⑥ 具体的アクション(「実現可能性」の証明)

【書くべき内容】 「何をするか」を時系列で具体的に書きます。(※記載内容は③の項目です)

  • 新製品・新サービスの内容: 開発するものの詳細な仕様。
  • 具体的アクション: 誰が、いつ、何をするのか(社内の体制とスケジュール)。
  • KPI(重要業績評価指標): 事業実施期間内(例:1年間)の具体的な数値目標(例:試作品開発完了、〇〇の精度を△%向上)。
  • 達成手段: 目標を達成できる根拠(技術力、体制、資金計画など)。

【行政書士の採択ポイント】 ここが「実現可能性」の採点項目です。審査員は「本当にこの会社に実行できるのか?」を見ています。 以下の4点を具体的に記述し、疑念を払拭しましょう。

  1. 技術力: 担当者の経歴や保有資格、過去の実績を示し、「この技術があるから可能だ」と断言します。
  2. 体制: 社内のプロジェクト体制図(誰が責任者で、誰が実務を行うか)を明確にし、必要に応じて外部の専門家(大学教授、コンサルタントなど)の協力体制も示します。
  3. 資金調達: 補助金は「後払い」が原則です。自己負担分や、補助金入金までの「つなぎ融資」について、「取引先の〇〇銀行△△支店・担当者□□様と協議済み」など、金融機関と具体的な協議が進んでいることを示します。
  4. スケジュール: 無理のない、現実的なスケジュールをガントチャートなどで視覚的に示します。

⑦ 要する経費(投資の妥当性)

【書くべき内容】 経費明細表に記載する「投資内容」の詳細な説明です。

  • 経費の必要性: なぜ、その設備(システム)が必要なのか。
  • 機能・性能: その設備(システム)の具体的な機能や性能、型番。
  • 期待される効果: それを導入することで、⑥のアクションがどう達成されるのか。

【行政書士の採択ポイント】 審査員は「費用対効果」と「経費の整合性」を見ています。 「なぜ、A社のこの機械(型番〇〇)でなければならないのか?」を明確に説明する必要があります。「B社やC社の類似製品と比較検討した結果、本事業の課題解決にはA社の〇〇という機能が必須であるため、これを選定した」というように、選定プロセスと妥当性(相見積もり)を示すことが重要です。オーバースペックな投資や、事業と無関係な経費は減点対象です。

⑧ 地域経済への貢献(「政策面」での加点)

【書くべき内容】 自社の事業が、国の政策や地域経済にどう貢献するかをアピールします。

  • 地域資源の活用: 地域の特産品や人材を活用する計画。
  • 地域経済への貢献: 地域の他社との連携(サプライチェーン強化)や、新たな雇用創出など。

【行政書士の採択ポイント】 これは「政策面」として独立した審査項目です。配点は20点と高く、内容をしっかり書けば確実に加点が見込める「ボーナスステージ」です。 例えば、「本事業の実施により、多摩地域の部品メーカーA社からの仕入れが〇%増加し、地域内サプライチェーンの強化に貢献する」といった、具体的な連携を記載しましょう。国の進めるDX、GX(グリーン化)などに沿った取り組みであれば、それも漏らさず記載します。


まとめ:採択される計画書は「一貫した論理」

ご覧いただいた通り、補助金に採択される事業計画書とは、

「①背景・課題」を、「②会社全体の戦略」の中に位置づけ、 「③競合に勝てる革新的な事業」を、「⑥実行可能な体制」で進め、 「⑦妥当な設備投資」によって、「④具体的な売上」を上げ、 その結果、「⑤賃上げ」「⑧地域貢献」を実現する、

という、8つの要素がすべて論理的に繋がったストーリーでなければなりません。

これらすべての審査項目を網羅し、客観的な根拠(エビデンス)を揃え、審査員を納得させる「優」評価の計画書を、経営者様が本業の傍らで作成するのは至難の業です。

おくだいら行政書士事務所は、補助金申請と、その前提となる建設業許可や各種許認可を専門としております。事業者様の「強み」を最大限に引き出し、審査員の視点に立った「勝てる」事業計画書の作成を強力にサポートいたします。

東京都・多摩地域(府中市、立川市、国立市、八王子市など)の事業者様、建設業・製造業の経営者様で、補助金申請をご検討の方は、ぜひ一度ご相談ください。初回の事業ヒアリング・ご相談は無料です。