個人事業主の「法人成り」は要注意!東京都創業助成金で受給資格を失わない会社設立時期と手続きの全手順

東京都の「創業助成事業(創業助成金)」は、最大400万円という手厚い資金支援が受けられるため、個人事業主から株式会社や合同会社への「法人成り(法人化)」を見据えて申請を検討される方が多くいらっしゃいます。

しかし、創業助成金において最も気をつけなければならないのが、「法人成りのタイミング」です。募集要項には、申請から事業完了までの間に法人を設立してしまうと、せっかく採択されても「助成金を受給する権利を失ってしまう(交付決定の取り消し)」という極めて厳格なルールが存在します。

「個人事業主として申請したあとに、税理士から法人化を勧められた」「融資の都合で急遽会社を設立した」といった事情であっても例外は認められません。

本記事では、東京都創業助成金において「絶対に法人を設立してはいけない期間」と「安全に法人成りするための基準日」、そして過去に個人で受けた創業融資や特定創業支援の証明を法人に引き継ぐための必須条件まで、募集要項に基づき徹底的に解説します。


個人事業主や創業予定者が知っておくべき「負担付贈与契約」の性質

なぜ、途中で法人成りすると助成金がもらえなくなるのでしょうか。その理由は、創業助成金の採択(交付決定)が「負担付贈与契約」という法的な性質を持っているためです。

個人申請に対する交付決定は「個人事業」に限定されるという原則

個人事業主、またはこれから創業する予定の個人として申請を行った場合、公社による審査を経て行われる交付決定は、あくまで「その個人(個人事業)」に対して行われます。助成対象となる事業も「その個人の事業」として認定されるため、途中で別の人格である「法人」に勝手に切り替えることは契約違反となります。

助成対象期間中に法人設立を行うと助成金が受給できなくなる規定

募集要項には、負担付贈与契約に付される条件として、以下のように明確に記載されています。

「個人、個人事業主の方は助成対象期間中に法人設立を行わないこと。」(募集要項 P61より)

つまり、交付決定日から最長2年間の「助成対象期間」が完全に終了するまでは、原則として個人事業主のままで事業を実施・完了させなければならないのです。


【図解】法人設立により助成金が受給できなくなる「空白期間」と基準日

では、申請年度に法人成りしたい場合はどうすれば良いのでしょうか。公社は、申請後に法人を設立したい方向けに、特例として「基準日」を設けています。

申請日から「基準日(面接審査開始日の前営業日)」までに法人設立・書類提出を完了させるルート

創業予定の個人・個人事業主が申請した後、「基準日」までに条件を満たした上で法人を設立し、所定の書類を公社に提出すれば、交付決定は「設立した法人」に対して行われます。これにより、法人として助成金を受給し、事業を進めることが可能になります。

令和8年度第1回募集における「基準日」は、面接審査開始日の前営業日である「令和8年7月1日」です。
この日までに、以下の手続きをすべて完了させる必要があります。

  • 法人の設立登記を完了させること。
  • 法人名義の申請書(設立した法人の情報を記載したもの)を再提出すること。
  • 法人の「履歴事項全部証明書」を提出すること。

なお、この申請ルートを利用するための必須条件として、「個人事業の期間が5年未満であること」「申請を行った個人が代表者となる法人であること」「設立した法人が申請した事業計画を実施すること」のすべてを満たす必要があります。

基準日翌日から事業完了日までの「法人設立NG期間」と、事業完了後に法人化する場合の義務継承ルール

最も危険なのが、基準日の翌日(令和8年7月2日)から、助成事業が完了する日(最長で令和10年8月31日)までの間です。

この期間に法人を設立してしまうと、事前の基準日に間に合わず、かといって個人事業主としての契約条件(対象期間中の法人設立禁止)にも違反することになり、いかなる理由があっても助成金は受給できなくなります。

一方で、助成事業が完全に終了し、完了検査を受けた「後」に個人事業主から法人化(法人成り)を行うことは問題ありません。
その際、助成事業者が設立した法人の代表者として同一事業を行う場合には「事業活動を継続している」とみなされ、5年間の都内での事業継続義務や、企業化状況報告書の提出義務、収益納付の義務などはすべて当該法人がそのまま引き継ぐ(継承する)ことになります。


個人時代に取得した「創業融資」や「特定創業支援証明」は法人に引き継げるか?

創業助成金の申請には【申請要件2】として「指定された22の創業支援事業の利用証明」が必要ですが、法人成りをする際、「個人名義で受けた融資や証明書は、法人申請時に有効なのか?」という疑問が生じます。

個人で創業融資(要件15〜17)を受けた後に法人化して申請するための2つの必須条件

個人事業主として東京都や区市町村の創業融資(制度融資)を受けた後、法人成りして「法人」として本助成金に申請する場合、以下の2つの条件をすべて満たしていれば、個人時代の融資実績を申請要件として引き継ぐことができます(※経営経験が通算5年未満の方に限る)。

  1. 法人が創業融資を利用した個人事業と同一事業を実施していること。
  2. 個人事業を行っていた方が、代表者となっている法人であること。

個人で特定創業支援(要件20・21)の証明を受けた後に法人化する場合の同一性確認ルール

同様に、個人時代に自治体の「認定特定創業支援等事業」のセミナー等を受講し、区市町村長から証明書(要件20)を受けた場合も引き継ぎが可能です。

個人で支援の証明を受けた後に法人化し、本助成金事業に申請を行う場合、証明書に記載されている個人の氏名と、設立した法人の代表者が同一であることが確認できれば申請可能です。

法人成りした場合に提出が必要となる書類(履歴事項全部証明書と個人事業の開業届の両方が必要な理由)

以前に個人事業主として事業を行っており、その後法人成りした方が創業助成金に申請する場合、申請時の提出書類に注意が必要です。

法人としての実在証明である「履歴事項全部証明書(原本)」の提出はもちろん必要ですが、それだけでは「個人事業主時代を含めて経営経験が通算5年未満か」どうかを公社が確認できません。そのため、過去の個人事業開始時期を証明するため、税務署の受付印がある「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」の写しも必ずセットで提出する必要があります。


開業届・納税地変更・確定申告書に関する実務上の注意点

法人成りに限らず、個人事業主や創業予定の個人の手続きにおいて、要件違反や経費の否認につながりやすい実務上の注意点を解説します。

創業前の個人が採択された場合、開業届提出前の契約・支出がすべて対象外となる規定

本助成金では、「個人事業の開業(開業届の提出)」をもって事業を開始したとみなされます。

そのため、「創業前の個人」として申請を行い採択された場合、助成対象期間内(交付決定日以降)であったとしても、税務署に開業の届出を行う「前」に契約・履行・支出した経費は一切助成対象になりません。
経費を使う前に、必ず開業届を提出し、事業を開始した状態にしなければならない点にご注意ください。

納税地が都外の自宅である個人事業主が申請前に行うべき「納税地変更・異動届出書」の手続き

個人事業主の申請要件には、「納税地が都内に実在する」ことが必須です。

開業の届出を行った際、主たる事業所(店舗など)は都内にあるものの、納税地を「都外の自宅住所(埼玉や神奈川など)」にしており、現在もその状態が続いている場合は申請要件を満たしません。
申請を行うまでに、納税地を主たる事業所の所在地(都内)に変更する「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」を税務署に提出し、その写しを開業届の写しと共に申請時に公社へ提出する必要があります。

また、過去に都外で開業・納税しており、現在両方とも都内に移転している場合は、移転時に税務署に提出した「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」の写しを提出しなければなりません。


府中市、立川市、八王子市エリア対応|法人設立時期を見据えた補助金・許認可の総合サポート

東京都創業助成金は、基準日(7月1日)という非常にタイトなスケジュールの中で法人設立登記を完了させなければ、受給資格を失ってしまうというリスクを抱えています。さらに、法人成りする際には、事業計画書の書き直し、各種届出の変更、創業融資の引き継ぎ手続きなど、膨大な事務作業が短期間に集中します。

おくだいら行政書士事務所(府中市、立川市、八王子市エリア対応)では、多摩地域で創業・法人成りを検討されている事業者様に向けて、創業助成金の申請スケジュールから逆算した、無理のない会社設立手続きと資金計画の策定をサポートしております。

当事務所のサポートの強み

  • 事業会社での総務・法務統括経験を活かしたリスク管理:代表行政書士は、官公庁での補助金審査経験に加え、建設会社の取締役として自社の資金調達や法務手続きを統括した経歴を持ちます。法人成りのベストなタイミングの選定や、助成金の受給要件(空白期間)に抵触しないスケジュール管理を徹底いたします。
  • 中小企業診断士との連携による資金計画の再構築:提携する中小企業診断士とともに、個人時代から引き継ぐ創業融資の取り扱いや、法人化に伴う社会保険料等の固定費増加を見込んだ、助成金審査に耐えうる強固な資金計画を再構築します。
  • 多摩地域への迅速なフットワーク:国立市を拠点としており、府中市、立川市、八王子市をはじめとする多摩地域へスピーディーに出張対応いたします。土日や夜間のご相談にも柔軟に対応し、期限の迫った設立登記や申請手続きも確実にサポートいたします。

「創業助成金に申請したいが、法人成りのタイミングで迷っている」「個人で受けた特定創業支援の証明をどうやって法人に引き継ぐのか不安」「基準日までに設立登記と申請書の再提出を間に合わせたい」とお考えの方は、ぜひおくだいら行政書士事務所までご相談ください。