相続手続き③ 財産調査

相続のお話その3

『財産調査』

前回までに、『遺言書の確認』と『戸籍の収集』を行いました。これで相続人は確定します。
次に、財産調査をし、遺産の範囲を確定します。
この場合の財産とは、プラスの財産(資産)も、マイナスの財産(負債)も含みます。
プラスの財産を積極財産、マイナスの財産を消極財産といいます。
全ての財産を特定し、記載したものを財産目録といいます。
財産調査のゴールは、財産目録を作成することです。

■法定相続情報一覧図の取得

財産調査では、金融機関や官公署などの様々な機関に問合せをします。
その際に、被相続人と相続人の身分証明が求められます。これは、戸籍謄本などで示しますが、戸籍謄本の束を持ち歩き、機関ごとに必要なコピーを提出するのはかなり面倒です。

この場合、法務局で法定相続情報一覧図を取得すると、手間が省けます。
法定相続情報一覧図は、収集した戸籍謄本をもとに作成した相続人の一覧図を、法務局が証明するものです。
これがあれば、原則としてどの機関でも被相続人の財産情報について問合せが可能です。
作成手続きは管轄の法務局で行います。

■財産の種類と特定の方法

プラスの財産は、不動産、動産と分かれます。動産は、預金、有価証券、現金、現物(車両など)などに分かれます。
それぞれの財産の種類と特定の方法について記載します。

■不動産

不動産は、原則として土地と建物のことです。
まずは、相続人が保管している不動産の権利書などを探します。
また、不動産に課税されている場合は、固定資産税を支払っていますから、その記録を探します。これは、役所からの納付書や、口座の振替等の記録などを確認します。

納付書などがない場合や、固定資産評価が低い、またはそもそも非課税(宗教法人や学校法人等が使用しているなど)のために課税されていない不動産がある場合は、区市町村役場から固定資産評価証明書を取得して確認します。

ただし、固定資産評価は、それぞれの区市町村ごとに行うため、他の区市町村の不動産については記載がありません。
不動産の存在が特定できたら、その不動産についての登記簿謄本を取得します。これは、管轄の法務局で行います。

■預金

預金口座の特定は、被相続人が保有していた通帳やキャッシュカード、また金融機関からの郵便物などを頼りに行います。
次いで、該当する金融機関に、残高証明書の発行を依頼します。この際、上記の法定相続情報一覧図があるとスムーズです。
また、過去の取引記録もあわせて取得すると、他の財産の特定にも役立つので、便利だと思います。

■有価証券、現金、現物

株式や国債などの有価証券は、手元に証書類があるか確認し、該当する企業等へ確認をします。
現金、現物(車両など)は、手元にあるものを確認します。

■保険金の扱い

死亡保険の保険金が発生した場合、これは受取人の財産とみなされるため、原則として遺産には入りません。

■負債

負債の代表格は借金です。
これは借用書などが手元に全てあればいいですが、ない場合もあるので、全国銀行個人信用情報センター、株式会社シー・アイ・シー、株式会社日本信用情報機構などの信用保証機関に問合せます。
個人間の借金の場合は、地道に調べるしかありません。

■未払金

税金や保険料などの未払金も負債になりますので、役所からの納付書などを確認します。

■保証債務

被相続人が連帯保証人や保証人になっている場合も、保証債務といって、負債になります。これは、保証債務を示す契約書類を探します。

財産の特定は、これさえやれば確実という方法はありません。どこまでいっても例外や漏れの可能性はありますので、慎重に行う必要があります。

■財産の評価

財産が特定されたら、その評価を行う必要があります。預金や現金は額面通りの評価ですが、不動産や現物(車両など)は、別途評価が必要な場合があります。

■不動産の評価

不動産の評価方式は、固定資産税の算出根拠になる固定資産税評価を用いるもの、公示された路線価をもとにするもの、実際の取引価格の相場をもとにするもの、不動産鑑定士の鑑定をもとにするものなど、様々です。
どの評価方式をとるのかは、評価の目的にもよります。
相続税を抑えるためには、不動産評価は低い方が好ましいです。
通常は、取引価格の相場よりも、役所の固定資産税評価は低くなります。
遺産相続に争いがあり、第三者による評価が望ましい場合は、不動産鑑定士の鑑定がよいかもしれません。

■現物(車両など)

車両や絵画などの現物資産の評価は、それぞれに鑑定するほかありません。車両ならば、売却した場合の価格などを参考にします。

財産の特定と評価が済んだら、その情報をもとに財産目録を作成します。様式は任意です。
この財産目録を前提として、遺産分割に進みます。
おくだいら行政書士事務所
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