相続手続き④ 遺産分割協議。

相続のお話 その4
『遺産分割協議』

相続のお話は、今回で最後になります。相続人の確定、遺産範囲の確定まで進んだら、遺産をどのように相続するのか、どのように分割するのかを決めます。

■承認の種類と手続き

遺産の範囲が確定し、プラスの財産(資産)とマイナスの財産(負債)が明らかになったら、その財産をどのように相続するのかを決めます。
相続の方法のことを承認といい、3つの種類があります。
以下にそれぞれの説明をします。

■単純承認

単純承認とは、プラスの財産とマイナスの財産のどちらも無条件で相続することです。
特に手続きは不要です。
相続開始から3ヶ月以内に限定承認もしくは相続放棄の手続きをしなかった場合、単純承認をしたとみなされます。
注意すべきなのは、単純承認をするつもりがなくても、財産を処分したり、隠した場合には、単純承認をしたとみなされます。

■限定承認

限定承認は、プラスの財産の範囲内で、マイナスの財産を相続する方法です。
被相続人が、2000万円の資産があり、2500万円の負債がある場合、限定承認をすると、2000万円の負債を相続し、残りの500万円の負債については相続されません。
限定承認をするには、家庭裁判所での手続きが必要です。
また、相続人全員の合意が必要なので、一人だけ限定承認するということはできません。

■相続放棄

相続放棄は、一切の財産の相続を放棄する方法です。プラスの財産もマイナスの財産も相続されません。
プラスの財産よりもマイナスの財産が明らかに大きい場合などに使われます。
相続放棄は、家庭裁判所での手続きが必要です。
これは、他の相続人の合意は不要であり、一人だけ相続放棄することもできます。

■熟慮期間

財産をどのように相続するか、上記の3つの方法を選択する際、多くの場合、すぐには決められませんので、熟慮期間というものが設けられています。
期間は3ヶ月です。
この期間内に、限定承認もしくは相続放棄の手続きをしないと、単純承認したものとみなされます。
ただし、特別な事情がある場合は、家庭裁判所で手続きをして、熟慮期間の延長が認められる場合があります。

こうして3つの相続の方法を選択したら、どのように遺産を分割するのかを決めます。

■遺産分割の協議

遺産の分割方法については、原則として相続人全員の合意が必要ですので、全員で話し合う必要があります。
どのように遺産を分割するのかは、全員の合意さえあれば、相続人たちの自由です。

■遺産分割協議書の作成

法定相続分にしたがって遺産分割を行う場合には、原則として遺産分割協議書の作成は必要ありません。相続人の情報と財産目録があれば、誰がどれだけ相続する権利があるのかは明らかだからです。

また、有効な遺言書がある場合には、それにしたがって遺産を分割します。この場合、遺言書が根拠書類になりますので、遺産分割協議書を作成する必要はありません。

しかし、遺言書がない場合や、法定相続分とは異なる割合で遺産分割を行う場合には、遺産分割協議書を作成する必要があります。
後日、預金や不動産などの遺産の分配をする際に、遺産分割協議書が根拠書類となります

また、一度作成した遺産分割協議書は、原則として覆すことはできませんので、後日になって紛争が起こるのを予防できます。

■遺産分割協議書の内容

遺産分割協議書には、決まった様式はありません。以下の情報について、根拠書類(戸籍謄本や不動産登記簿など)とともに明確に記載があれば充分です。

①被相続人の氏名、最後の住所、死亡年月日
②相続人全員の氏名、住所
③財産目録(資産と負債の一覧)
④遺産分割の方法(誰かどの資産をどの割合で相続するか)

これらを記載した書面に、相続人全員が自筆署名し、実印を押します。別途印鑑証明も必要です。
また、後日に軽微な訂正が必要になる場合に備えて捨印もあると便利です。
書面が複数枚にわたる場合は、契印を施します。
遺産分割協議書は、相続人全員が保管することが望ましいので、割印も施します。

■遺産の分配、相続の完結

遺産分割の方法が決まれば、それにしたがって遺産を分配します。
不動産登記や預金の払い戻し、車両の名義変更などです。
これらを終えて、被相続人の財産がゼロになった時点で、相続は完結します。

以上で、相続のお話は終わりです。長文を読んでいただきありがとうございました。
おくだいら行政書士事務所
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